●第8回・T-MED政経文化塾論説

●各地で保守分裂、弱体野党とドン不在で

4月7日投票の統一地方選に合わせて、10の道県で知事選が行われる。うち半数の5道県で保守分裂が見られ、今年のトレンドとなっている。
 典型的な島根から見よう。ここは長く竹下王国だったが、いまやその王国が3分裂の争いです。

 自民党本部が推薦でなく「支持」としたのは元総務省官僚の大庭誠司氏(59)。国会議員全員とベテラン県議8人が推している。対抗するのは同じく総務省官僚の丸山達也氏(48)。こちらは中堅・若手の県議14人が推している。3人目は元安来市長の島田次郎氏(65)。歯科医師で島田三郎自民党参議院議員の実兄である。関係者の解説が興味深い。
 「保守の3候補とも竹下派と言える。竹下王国の3分裂だ。大塲氏を推した竹下亘氏は県連会長。対抗する中堅・若手県議のリーダーも元竹下登氏秘書。島田三郎氏も元同じく竹下元首相秘書だ。大庭氏対丸山氏の戦いと見るが、どちらが勝つか形勢は混とんだ」

 福井県知事選で自民党本部は元知事の杉本達治氏(56)の推薦を決めたが、対する知事4期で5期目挑戦の西川一誠氏(74)も強力だ。杉本氏、西川氏とも総務官僚出身で島根と同じく、先輩・後輩の戦いだ。ここの内幕も面白い。
 「国会議員も県議も、西川・杉本で分裂状態になった。西川知事は杉本氏を役所から県に2回出向させた。最初は総務部長、次は副知事として。しかし関係にヒビが入って骨肉の戦いになった」

 県連会長の山崎正昭氏は元参議院議員議長である。次のエピソードも。
 「山崎氏は当初、知事を希望したが、西川氏との候補者争いに敗れた。その怨念が残っており今回、杉本氏をかついで西川打倒に出ている」
福岡県知事選も保守分裂の典型である。自民党本部は元厚労省官僚の武内和久氏(47)。麻生太郎副総理と蔵内勇夫県連会長(県議)が推している。対立候補は知事現職2期の小川洋氏(69)。武田良太、宮内秀樹、鳩山二郎の3代議士と山崎拓元副総理が付いている。対立の内幕がまた興味深い。

 「8年前、麻生氏が経産官僚の小川氏を連れてきた。麻生政権の内閣広報官だった。ところが3年前の福岡6区の衆院補選で麻生・小川が仲たがいした。麻生氏が推した蔵内県連会長の息子の応援依頼を小川知事が断ったからだ」
 党本部の選挙関係者が笑って言った。
 「ふつう党本部の推薦は勝てる候補に出す。しかし今回の福岡は勝敗を度外視した推薦だった」
 麻生氏は安倍首相に直談判した、という。
 「武内の推薦が取れないなら副総理をやめる」
 ここでは、現職小川知事の優勢を党本部が認めているのだ。

 北海道では4選知事だった高橋はるみ氏の参院選を受けて、夕張市長の鈴木直道(37)と国交省北海道局長の和泉晶裕氏(57)をそれぞれ推す国会議員や道議が対立して一時は大騒ぎだった。鈴木氏には菅義偉官房長官、吉川貴盛道連会長(農水省)が、和泉氏には党道議50人のうち37人と財界が支持に回った。しかし、和泉氏が望んだ「自民党から一本化して支持」が得られず出馬を断念して決着した。ただし北海道は今回、珍しい与野党一騎打ちである。
 どうして各地で保守分裂の抗争が起きるのか。ベテラン記者が語った。
 「まず野党が弱く、強い候補を出せないので安心して内部を抗争している。次に各県のドンが不在で、ベテラン国会議員の力量が落ちて、県議が上意下達に反発してクーデターを起こしている」
そして次の指摘も。
「自民党は政権復帰して6年になる。中央はおとなしいが、その反動で地方では権力闘争が起きている。地方が活発・活性化しているわけで、そのダイナミズムは好ましい、と言える」

「永田町社稷会」主宰 鈴木棟一氏より