●第2回T-MED政経文化塾論説

今日は、現代政治「外交編」
筆者は、小生の孟子学習の師である、政治評論家・元毎日新聞政治部・鈴木棟一先生です。
 
 
米中対立が激化、習近平とペンスが「一帯一路」で火花
 
・「借金漬けだ」「ワナではない」
 米中の対立が激化している。報復閲覧合戦だけではない。米国は中国の核心的戦略である「一帯一路」や「中国製造2025」に、はっきりと矛先を向け始めた。
 
 11月17日、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーで開かれた21ヵ国参加のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で中国の習近平国家主席と米国のペンス副大統領が激しい言葉の火花を散らした。ペンス氏が言った。
 
 「米国は自由なインド太平洋地域を望んでいる。米国のこの地域への関与は揺るぎなく永続的である。この地域に帝国主義や権威主義、侵略の入り込む余地はない」
 習主席を前に、中国を念頭にした攻撃である。一帯一路について。
 「米国はパートナー国を借金の海で溺れさせたりしない。締めつける帯や一方通行の路を提案しない」
 ペンス氏は「この地域で最大600憶ドル(6・8兆円)のインフラ支援」を表明して言った。
 
 「相手国を『借金漬け』にする国より、協力相手として米国の方が『良い選択』だ。主権を危うくする外国からの借り入れを受けてはならない。米企業は主権を尊重し、真の利益をもたらす」
 中国が進める南太平洋の国々へのインフラ計画を排撃する意図が見られた。 
 
ペンス氏に先立って演説した習近平氏は、制裁関税を課す米国を非難した。
「ルールとは国際社会が共同で定めるべきもので、腕っ節が強く、気が弱い誰かが言えば決まるものではない。」
 トランプ米大統領の一国主義、保護主義を批判している。米国が保護主義を唱えて、中国が自由貿易主義を唱えるある種の“逆転現象”があり、習主席はここを米国の弱点と見て攻撃する。昨年1月のダボス会議(世界経済フォーラム)で習氏が演説した。
「保護主義は自ら暗い部屋に閉じこもると共に、部屋から光や空気を奪うようなものだ」
争点になっている一帯一路について。習氏はAPEC演説で強調した。
 
「開放的な協力のプラットフォームだ。誰かがあれこれ言っているようなワナではない。一つの国がどんな道を歩むかは、その国の人々が、最も大きな発言力を持つ」
米国の介入を拒否する姿勢だった。こんな応酬の結果、APECは首脳会議の採択を断念した。これには議長国のパプアニューギニアのパト外相の執務室に中国代表団が乱入する事件がおまけに付いた。AFP通信などが伝えた。
 
「首脳会談の声明をめぐるギリギリの交渉が続く中、中国の代表団員が首脳宣言の採択を阻むためにパト外相に強引に面会を求め、断られると力ずくでドアを開けて押し入ろうとし、外相は警察を呼んで防いだ。首脳宣言は中国以外のすべての国が同意していたが、中国代表団はその阻止を叫び、罵り、獣のようだった」
 
この前後の動きを中国分析の遠藤誉女史が解説した。
「習主席は2日前の15日に現地入りし、14日のパプアの地元紙すべてに署名入り声明を発表、送迎のためのバス80台を提供した。小学校を建てたり幹線道路を整備したりとチャイナマネーを注いで存在感を高めようとした。16日にはパプア、トンガなど南太平洋の8か国の首脳を集めて、多額のインフラ支援への謝意を引き出すとともに、一帯一路への協力を求めた」
遠藤氏が結んだ。
 
「南の国々はマネーで心を売らなかった。習主席が主導権を握れず、宣言が見送られたのは、ペンス副大統領の抵抗もあったが、南の国々が習主席を警戒したからだ。8ヵ国は習主席の権威主義の姿勢に反発し、一帯一路に危険を感じた」
 
「永田町社稷会」主宰 鈴木棟一氏より